個人事業主が手形発行をする方法!資金繰りのメリット【初級編】

個人で事業を行っている事業主や、(主に中小企業の)経営者が資金繰りに困った場合、消費者金融の事業者ローンを利用する方法以外に、手形を発行するという方法があります。
手形という言葉は聞いたことがあっても実際に自分もできるのか?と疑問に思う方も多いでしょう。
今回は手形の発行はどのように行うのか、また、メリットとデメリットについて説明していきます。
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当座預金の口座が必要
個人事業主や法人が手形を利用する為には、取引のある銀行に当座預金の口座を開設していないといけません。この当座預金の口座と一般の普通預金の口座は、主に以下の違いがあります。
普通預金口座
- 半年ごとに預金額に応じた利息を受け取ることができる
- 通帳とキャッシュカードの発行がある
- 基本的に誰でも作ることができる
当座預金口座
- 預金額に関わらず、利息は一切受け取れない(付かない)
- 通帳の発行はなく、希望をすればキャッシュカードが発行できる
- 信用状態によって作ることができない場合がある
このように、当座預金は普通預金より開設すること自体が厳しく、また、利息が一切付かないので個人でこの口座を作るメリットはほぼありません。
ですが、個人事業主や経営者となると話は別で、この当座預金の口座を持っていると、その口座に対応した手形帳を発行してもらうことができるのです。(※法人の場合は法人名義になります)
手形帳とは
手形帳とは、それに紐付けられた当座預金の中から支払うことを約束して、自由に手形を振り出すことができる台帳です。
振り出す手形は支払い日を自由に設定できるのが特徴で、今は現金がない場合でも、その日までに入ると分かっている場合にとても便利です。その為、小規模で商売を行っている人にはよく利用されています。
例えば、20万円の手形を11月1日の日付で振り出した場合、受け取った人がその日に手形を発行した銀行の窓口までそれを持っていくと、20万円の現金が受け取れるという訳です。
もちろん手形と紐付いている当座預金の口座にその分の残高があることが条件で、それがなかった場合にはその手形は”不渡り”という扱いになってしまいます。
手形の不渡りとは?
発行した手形が不渡りになってしまうと、その銀行との取引だけでなく、全ての金融機関や金融業者との関係に大きな影響が出てしまいます。その情報が信用情報に記録されてしまう為です。
一度目の不渡りであれば、少なからず影響はあるものの、何とかそのまま事業を続けることが可能です。
しかし二度目の不渡りを出してしまうと、あらゆる銀行との取引がその後最低2年間は行えなくなってしまい、事実上の倒産となってしまいます。もし上場企業だった場合には、その上場が強制的に廃止されます。
よって、手形を振り出したからには、必ずその日付までに記載した金額を当座預金の口座に用意しておかないといけません。
手形を担保にしてお金を作る
発行された手形は、期日になると銀行でそのまま現金化できます。この手形の性質を利用して、担保として発行するという使い方があります。
担保にできる理由
本来の使い方とは違いますが、発行した手形を担保として提出することで、その額面に応じた融資を受けることが可能になります。つまり、30万円の額面で手形を発行し、それを担保に25万円を借りるというようなことができるのです。
もし期日までに30万円が用意できないと、その手形は不渡りとなってしまいます。そうなると、上記のように最悪はそのまま廃業となってしまう可能性まであるだけに、手形を受け取った方も安心できる担保になるのです。
銀行で受け取れるのもメリット
手形を担保にお金を貸した側は、その日付に(先に預けておくこともできます)銀行に手形を持って行けばそのままお金になります。その為、いわゆる取立てなどを行う必要がありません。これは、貸す側にとって大きなメリットです。
振り出す側も、大事な不動産などを担保にすることなく、すぐに用意して融資を受けることができます。
担保率は様々
上に30万円の手形で25万円を借りるという例を挙げましたが、発行した額面に対してどれくらい借りることができるかはケースによって様々です。
個人事業主や中小企業では、大手都市銀行の手形帳を発行してもらうのは至難の業です。
よって、ほとんどは地方銀行を利用することになりますが、発行した人やその銀行の信用、期日までの期間によって担保としてどれくらいの価値があるかが大きく変わります。
手形の支払日は自由に設定できると書きましたが、一般的には60日後まで、長くても90日後までが限度です。それ以上先の支払日だと、極端に担保率が落ちると考えてください。
手形発行まとめ
どこかの銀行に当座預金の口座を持っていれば、このような方法でお金を作ることができます。
無担保融資では難しいと言われてしまった場合でも、手形を用意できればその内容に応じた融資が受けられるという訳です。
その為にも個人事業主や中小企業の経営者は、当座預金の口座を1つは持っておくに越したことはありません。ただし、デメリットとして、不渡りを出してしまうと大変なことになってしまうので、迂闊に大きな金額での振り出しは行わないように注意してください。